低酸素環境下での閾値トレーニングは、持久力向上に非常に効果的なトレーニング方法として注目されています。
低酸素下での閾値トレーニングのメカニズムと効果
低酸素環境(模擬高地環境など)でトレーニングを行うと、体は酸素が少ない状態に適応しようと様々な生理的変化を起こします。特に乳酸性作業閾値(LT値)や無酸素性作業閾値(AT値)の向上に繋がる主なメカニズムと効果は以下の通りです。
ヘモグロビンと赤血球の増加: 低酸素状態にさらされることで、酸素を運搬する赤血球やヘモグロビンの生成が促進されます。これにより、全身への酸素運搬能力が高まり、持久力が向上します。
ミトコンドリア機能の向上: 筋肉内のミトコンドリアはエネルギー生成の中心であり、乳酸をエネルギーとして利用する能力も持っています。低酸素トレーニングによりミトコンドリアの数や機能が向上し、乳酸を効率的に処理できるようになるため、高強度運動を持続できる時間が長くなります。
毛細血管の発達: 酸素や栄養素を筋肉に供給し、老廃物を除去する毛細血管の密度が増加します。これにより、酸素の利用効率が向上し、疲労物質の除去が促進されます。
乳酸処理能力の向上: 低酸素環境では、より低い運動強度でも乳酸が生成されやすくなります。これにより、体が乳酸を処理・活用する能力を鍛えることができ、結果的に乳酸閾値が向上し、疲労困憊に至るまでの時間を延ばすことができます。
心肺機能の強化: 低酸素下では心臓や肺にかかる負荷が大きくなるため、心肺機能そのものが強化されます。これにより、最大酸素摂取量(VO2max)の向上にも繋がります。
閾値トレーニングへの応用
これらの生理的変化は、特にLT値やAT値の向上に寄与します。LT値が高いほど、より高い強度で運動を継続できるようになるため、マラソンやトライアスロンなどの持久系スポーツにおいてパフォーマンスアップが期待できます。
低酸素トレーニングは、通常環境での高強度トレーニングと比較して、身体への負担を軽減しつつ同等以上の効果を得られる可能性があるというメリットも挙げられます。例えば、通常環境でLT走を行うほどの高強度でなくても、低酸素環境であれば同等の生理的負荷をかけられるため、怪我のリスクを減らしながら効率的にLT値を向上させることができます。
