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運動誘発性貧血の改善効果

コラム

スポーツ性貧血(運動誘発性貧血)は、激しいトレーニングを続けるアスリートによく見られる貧血傾向で、通常の鉄欠乏性貧血とは原因が複合的です。

常圧低酸素トレーニングは、このスポーツ性貧血の予防や改善に対して、非常に有効な手段の一つとして注目されています。

🏃 スポーツ性貧血と低酸素トレーニングの効果

スポーツ性貧血の主な原因は、以下のようなものが組み合わさって起こります。

  1. 鉄の損失増加: 発汗や消化管からの微量出血、足底での赤血球破壊(溶血)による鉄分の喪失。

  2. 炎症による鉄の利用障害: 激しい運動後の炎症反応でヘプシジンというホルモンが増え、食事からの鉄の吸収や、体内の貯蔵鉄(フェリチン)の利用が妨げられる。

  3. 血液量の増加(擬似貧血): トレーニングに適応するために血液中の水分が増え、ヘモグロビン濃度が一時的に薄まる。

常圧低酸素トレーニングは、これらの問題のうち特に**「血液成分の改善」「鉄の利用の改善」**に貢献します。

1. ヘモグロビン(Hb)と赤血球の増産

  • エリスロポエチン(EPO)分泌促進: 低酸素環境に曝されることで、腎臓から造血ホルモンであるEPOが分泌されます。

  • 造血機能の強化: EPOは骨髄に働きかけ、酸素運搬を担うヘモグロビンと赤血球の増産を促します。これは、スポーツ性貧血で低下しがちなヘモグロビン濃度を回復させる直接的な効果が期待できます。

2. 炎症・鉄の利用障害の抑制

  • ヘプシジン応答の抑制: 最近の研究では、特に強度の高い運動後の**低酸素環境下での回復(リカバリー)**が、鉄の利用を妨げるヘプシジンの濃度上昇を抑制する可能性があることが示唆されています。

  • ヘプシジンが抑制されると、腸管からの鉄の吸収が促進され、体内の鉄を効率よく使えるようになります。

3. 運動効率の改善

  • 低酸素環境でのトレーニングは、末梢組織での酸素利用能を高め、**最大下運動時の酸素消費量を減少させる(運動効率を改善する)**可能性が示唆されています。これにより、同じ運動量でも身体にかかるストレスが減り、貧血に至るリスクを軽減できると考えられます。

⚠️ スポーツ選手への重要な注意点

スポーツ性貧血への効用を最大限に引き出すためには、前回の回答と同様に**「鉄分の適切な補給」**が絶対に必要です。

  • 低酸素トレーニングは「赤血球を作れ」という**指令(EPO)を出す機能は高めますが、その材料(鉄分)**がなければ、かえって体内の貯蔵鉄を使い果たし、貧血が悪化するリスクがあります。

低酸素トレーニングを行うアスリートは、血液検査で鉄の状態(フェリチン値など)を定期的にチェックし、専門家の指導のもとで鉄分を積極的に補給しながら行うことが、安全かつ効果を出すための鍵となります。